はじめに
2023年10月1日にインボイス制度という新しい消費税の仕組みがはじまることは、前回記事「インボイス制度って何？」にも記載した通りで、2023年10月1日以降は、「適格請求書発行事業者」として登録されないと、インボイス（適格請求書）を発行できなくなります。
発注者側において、インボイス （適格請求書） がないと仕入税額控除（預けた消費税を納める消費税から差し引くこと）ができなくなることから、 発注者は、インボイス （適格請求書） が発行できない事業者ではなく、 「適格請求書発行事業者」 との取引に切り替えるインセンティブが働くことになります。
したがって、これまで免税事業者として、合法的に消費税を納めることを免除されていたスモールビジネスを行っている事業者の皆さんにとって、この影響は非常に大きなものとなり、「適格請求書発行事業者」として登録せざるを得なくなるかもしれません。
そこで、本日は、もし皆さんが来るインボイス制度に向けて 「適格請求書発行事業者」 になることを決めた場合、どのような手続きが必要になるのか、概要をご紹介します。
適格請求書発行事業者の登録をする
適格請求書発行事業者になるためには、まず、適格請求書発行事業者の登録申請書を税務署に提出する必要があります。
そして、税務署での審査を経て問題がなければ、税務署から「登録番号」が通知され、これで晴れて（？）適格請求書発行事業者となります。インボイスには、この「登録番号」を記載しなくてはならず、免税事業者には「登録番号」は発行されないため、「登録番号」を発行してもらうためには消費税の課税事業者となる必要があります。
課税事業者になるためには、通常であれば「課税事業者（選択）届出書」の提出が必要となるのですが、インボイス制度導入時の経過措置として、免税事業者が令和5年10月1日の属する課税期間中にインボイス発行事業者になりたい場合には「登録申請書」だけ提出しておけば「課税事業者（選択）届出書」の提出は不要とされています。なお、この場合、課税事業者となるのは課税期間の開始日にかかわらず2023年10月1日からで、それまでは免税のままとなります。
登録申請書は、インボイス制度導入の2年前となる2021年10月1日から提出が可能になっていますので、既に現時点（2021年11月4日）においても提出することができます。税務署での審査に時間がかかるとされていることから、導入時点で「登録番号」を発行されているためには、インボイス制度開始の半年前の2023年3月31日までの提出が推奨されています。
ちなみに、適格請求書発行事業者の登録番号は、法人番号がある場合は「T+法人番号」、法人番号がない個人事業主などは「T+13桁の数字」が発行されます。
インボイス（適格請求書）を発行する
税務署の審査を通過し、適格請求書発行事業者となると、軽減税率対象品目の販売有無に関わらず、取引先が要求した場合にインボイス（適格請求書）を発行する義務が生じます。
インボイス（適格請求書）には、以下事項の記載が必要となります。
- 適格請求書発行事業者の名称および登録番号
- 取引年月日
- 取引内容（軽減税率対象品目の場合はその旨）
- 税率ごとに合計した対価の額（税抜きまたは税込み）および適用税率
- 消費税額（端数処理は一請求書あたり税率ごとに1回ずつ）
- 書類の交付を受ける事業者の名称
まとめ
- インボイス（適格請求書）の発行を受けないと、支払側（発注側）で仕入税額控除することができない
- 支払側（発注側）が、インボイスの発行ができない取引先から、発行できる取引先（適格請求書発行事業者）に切り替える可能性がある
- インボイスを発行するためには、「適格請求書発行事業者」として登録され、登録番号を通知される必要がある
- 「適格請求書発行事業者」として登録されるためには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出し、審査を受けて承認される必要がある
- 登録申請書は、2021年10月1日から提出可能で、税務署の審査時間を踏まえると、2023年3月31日までに提出しておくことが望ましい
- 登録申請書を提出すれば、「課税事業者（選択）届出」の提出は不要（その場合、2023年10月1日から課税事業者となる）
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