はじめに
スモールビジネスといっても、事業をしていると、色々と必要なものが出てきます。
たとえば、弊所のような会計事務所であレバ、パソコン、机・椅子、場合によっては、コピー複合機、電話機器など揃えておく必要があるでしょう。
さらに、大工さんであれば、インパクトドライバや丸鋸などの工具類が必要ですし、美容院であれば、ミラー(鏡台)、シャンプーユニット、スチーマーなど諸々の美容機器は必需品です。
今回は、こうした事業に必要なものを買った場合、どのように経理、確定申告していったら良いかを見ていきたいと思います。
30万円未満なら経費にできる?
個人事業主の方とお話しさせて頂くと、よく「30万円未満なら経費にできるんですよね?」ということを聞かれます。
その通り、青色申告の方であれば、1個(または1組)当たり30万円未満のものについては、購入・使用開始した年度に一括して経費計上することができます(ただし、年間で合計300万円までという限度があります)。これを「少額減価償却資産の特例」といいますが、「特例」というからには、特別な扱いであって、原則的には実は別の取り扱いになっています。
原則的には、その年の経費として認められるのは、買ったものが10万円未満である場合です。ですので、青色申告の承認を受けていない白色申告の方は、10万円未満の減価償却資産までしか一括で経費計上することができません。
そして、10万円以上のものは、原則として「固定資産」として計上します。「固定資産」となると、そのものを買った年に一度に経費にすることはできず、「減価償却」という方法でその後何年もかけて経費計上していかなければならないのです。
なお、白色申告者・青色申告者の双方が適用できる特例として、「一括償却資産の特例」というものがあります。これは、買ったものが10万円以上20万円未満である場合、その耐用年数にかかわらず3年で減価償却(経費計上)できるという制度です。この特例を利用すれば、買ったものによっては、原則通り減価償却するよりも早めに経費計上できるかもしれません。
30万円未満かどうかの判断はどうするの?
単位は?
30万円未満かどうかは、買ったものの単位ごと(1個、1台、1セット)の価格で判断します。
つまり、1台25万円のパソコンを2台買って合計50万円となった場合、30万円未満かどうかの判断はパソコン1台当たりとなるので、2台ともに買った年の経費に入れられることができます。
ただし、例えば30万円未満のパソコンを買うときに、追加でハードディスクやメモリを増設して、それらオプションを含めて30万円以上となった場合は、パソコンとオプションを別々に考えるのではなく、パソコン一式として評価します。したがって、この場合は「固定資産」として少しずつ経費にしていくことになります。
税込?税抜?
ちなみに、スモールビジネスを始めて間もない個人事業主の皆さんは、消費税を払わない所謂「免税事業者」として「税込経理」をされていると思います。
この場合、買ったものが30万延未満かどうかについて、「税込」あるいは「税抜」のどちらで判定するのでしょうか?
これについては、その個人事業主の方が採用している消費税の経理処理方法によります。
したがって、「免税事業者」の個人事業主の皆さんは必ず「税込」で判定しなければなりません。
「課税事業者」の皆さんは、採用している経理方法によって異なり、税込処理を採用しているのであれば「税込」で、税抜経理を採用しているのであれば「税抜」で判定することになります。
30万円未満だと必ず経費にしないといけないの?
一般的に、利益が出た年はたくさん経費に入れてできる限り税金を減らしたいという気持ちになるので、30万円未満のものを一度に経費に入れることができる特例を使って経費とすると思うのですが、逆に利益が少なくなりそうだという時に、これ以上利益を減らさず、経営成績を少しでも見栄えの良いものにしたいという状況になることもありそうです。
その場合でも、30万円未満のものをその年の経費として入れなければならないのでしょうか?
答えはNOです。この制度はあくまで「特例」なので、特例を利用して一括で経費計上するのか、あるいは原則通り通常の固定資産として計上して減価償却していくのかは、納税者の判断に委ねられています。ただし、購入時(1年目)に採用した税務処理方法を2年目以降に変更することはできません。これを認めてしまうと、利益の操作(税金の操作)ができてしまうからです。
まとめ
- 何かものを買って使い始めた時、10万円未満であればその年の経費にできる
- 原則的には、10万円以上のものは「固定資産」として減価償却をして少しずつ数年にわたって経費とする
- ただし、青色申告であれば、30万円未満のものについてはその年の経費に入れることができる「特例(少額減価償却資産の特例)」を使うことができる(ただし、年間合計300万円まで)
- 30万円未満かどうかは、「税込」経理をしている場合は「税込」で、「税抜」経理をしている場合は「税抜」で判断する
- 30万円未満かどうかは、単位当たりの金額で判断する
- 「特例」を使うかどうかは納税者の判断に委ねられている(ただし、初年度に選択した処理は変更できない)
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